著者:守時 健(もりとき たけし)

元須崎市役所の職員。2013年に須崎市ご当地キャラクター「しんじょう君」を誕生させ、2016年にゆるキャラグランプリで優勝。キャラクターやSNSを駆使して、須崎市のふるさと納税寄付額を約1000倍に増やし、地方創生に貢献する。現在はSNSマーケティングに特化した地域商社「パンクチュアル」の代表取締役社長をつとめる。
スーパーゆるキャラ「しんじょう君」がいる須崎は住みやすすぎる
大阪から須崎に引越して12年になります。別に田舎が好きって訳ではなかったのですが、人が多いところは苦手でした。広島で生まれ実家は倉敷。大阪に10年ほど住んでいたのですが、田舎暮らしも良いかなと思い立って高知県須崎市に引越してきました。須崎を選んだきっかけは偶然です。大学生の頃、たまたま旅行で須崎に行った際、ちょうど「新子まつり」が開催されていました。祭りのステージを見ていたら突然、泥酔したおばあちゃんがステージに上がってきて、警備の人に摘み出されてたんです。「ここなら大学生活の続きができる」と思って移住を決めました。
ちなみに新子っていうのはメジカの稚魚です。8月〜9月にかけてしかとれない上に、足がはやくてなかなか県外に出回らないんで、須崎でしか食べられない幻の魚ですね。

移住と同時に、須崎市役所に就職。マスコットキャラクター開発に立候補し、そして誕生したのが「しんじょう君」です。
しんじょう君は今は絶滅してしまったニホンカワウソをモチーフにしたキャラクターで、頭には須崎名物鍋焼きラーメンの帽子をかぶっています。私が市役所に勤めていた頃に企画し、以来運営を続けているのですが、2016年のゆるキャラグランプリで優勝。前年まで200万円だったふるさと納税を、しんじょう君が宣伝隊長がやるようになってから1年目で6億円、次の年は10億円にまで伸ばしたり(ちなみに昨年は34億円で、なんと中四国で1位です!)。昨年10周年を迎えて全国から1500万円をクラウドファンディングで集り、銅像を立てたりとか。

毎年9月には「ご当地キャラまつりIN須崎」というキャラクターイベントを開催しているのですが、人口2万人弱の小さな街に全国から約100体ほどのキャラクターが集まり、来場者は約9.5万人という、高知県内ではよさこい祭りに次ぐ一大イベントとなっています。


さらには、コロナ禍のとき地元の漁師さんの養殖カンパチの行き場が無くなって困り果てていたときに、しんじょう君がお願いツイートをしたら3日で1億円くらい売れたりもして。そんなみんなに愛されるスーパーゆるキャラになりました!


須崎はすごく住みやすい街です。びっくりするほど田舎でも無いんだけど、自然も海もあるし、コンビニもスーパーもたくさんあります。
市役所を退職した現在は、全国を拠点に地方創生のお仕事をしていますが、やっぱり須崎はやりやすいというか、田舎特有の面倒な事があんまり無い街だと思います。いい人ばっかりだし。めんどくさい人もいますけど私くらいです(笑)。
きれいも美味しいもたのしいも。全部がある
須崎の名物といえば、鍋焼きラーメン。とっても美味しいですよ。鶏がらスープの醤油ラーメンで、あつあつの土鍋で提供されるのが特徴です。都会のラーメンに慣れていたかつてはちょっと物足りないなと感じていたのですが、いつの間にか私の血は鍋焼きラーメンで出来てるんじゃないかってくらいの頻度で食べています。昔、横浜の新横浜らーめん博物館で鍋焼きラーメンを出展したことがあるのですが、2時間待ちでした。美味しくて人気があるんだと思います。


そしてなんと言っても須崎といえば、お魚でしょう。これはもう間違いないです! スーパーで並ぶものですら、都会の高級店に負けないくらいに美味しいです。全国的に魚で有名な高知県内でも、須崎産はさらにブランド化されています。カンパチや鯛をはじめ、魚種もたくさんあるので、ぜひ食べにきてください。

須崎で私が好きなスポットは、「横浪スカイライン(横浪黒潮ライン)」です。写真のようにとても綺麗で、ダイナミック。この景色は観光地としても世界に誇れるのかなと県外出身の私は思っています。(車じゃないとしんどいので、行きづらいのですが……)

また、最近県外のお客さんから人気が高いのが鳴無(おとなし)神社。ここはなんと高知一のパワースポットです。佇まいがかっこいい。昔は海からしか参拝できなかったそうなので、今の時代に生きていてよかったなと思います。

芸術や文化面でも須崎は特色があって、市内には「すさきまちかどギャラリー」という施設があります。ここではいつも素敵な展示をしていたり、年に一度アーティストの方が滞在して作品制作をするアーティスト・イン・レジデンスも開催してます。今井麗さんや荒川修作さん、クロード・ヴィアラさん、ジャコルビー・サッターホワイトさんなど、世界的に活躍するアーティストとの交流が育まれています。

また、「しんじょう君を好きだ」と公言してくれているシンガーソングライターの大森靖子さんがライブをしに来てくれるのもとてもうれしい。なので文化的なものは全てあると思っています!

須崎の最近一番のトピックは「海のまちプロジェクト」です。須崎中心市街地を活性させるべく、須崎市と高知信用金庫が中心となって、観光スポットをつくる取り組みです。
須崎一帯の”いいもの”を集めたアンテナショップ「須﨑大漁堂」や港で水揚げされる魚を堪能できる「須﨑のサカナ本舗」など、街が目に見えて盛り上がっています。イケてるお店ができると周辺にもぽつぽつ新しいお店ができていてうれしいです。
サカナ本舗は地元漁業組合の「九石大敷」さんと連携していて、めっちゃ良いお魚が食べられます。それゆえにいつも大盛況でお昼時はほぼ空いていません。時間帯を外して行くのが良いでしょう。


須崎の不思議。世界に通用する魅力
近年、須崎ではなぜか世界中から若者が集まってきてノマド生活をしています。きっかけは誰かひとりからはじまったと思うのですが、たくさん街に来てもらっています。全国でも須崎の名前を知らない人の方が多いくらいの田舎まちで、きっと外国の方には全く馴染みが無いでしょうに……この光景には街のみんながびっくりです。


縁もゆかりも無い須崎に引越してきて、市役所に就職して、最初の頃は街の人みーんなから「須崎は何やってもダメ」「何も無い」って言われることばかりでした。「そんな街で定年まで過ごすの嫌だなあ」としんじょう君の事業やふるさと納税、イベント企画などをはじめました。今では私が関係してないところまで目に見えて街が元気になっていってて、すごくうれしいし楽しいです。
雷門!蟹!みたいに、わかりやすい魅力はこの街には無かったけれど、目を凝らすと世界に通用する魅力があるみたい。
私もそうでしたけど、“なんもないから、なんかしたくなる街”なんだと思います。須崎って。
編集:ツドイ
