2025/12/16 20:03 up
物語の冒頭で「1年後に死ぬ」と明かされていたみいちゃん事中村実衣子。
そして、最終的に彼女は宮城県の山中で身不明の遺体として発見されます。
あまりにも過酷で理不尽な死。
しかし、それは偶然や突発的な悲劇ではありませんでした。
みいちゃんの人生そのものが、すでに『死』へと向かうしかないレールの上にあったのです。
・愛されずに生まれ、社会からも見放された少女
みいちゃんは、宮城県で生まれました。
しかし、その家庭には最初から『闇』がありました。
両親は実の兄妹という関係で、彼女の存在自体がタブーとされる状況にあったのです。
この事実は彼女自身が認識しており、作中で山田に語る場面もあります。
地域社会では偏見の目で見られ、親からも十分な愛情を受けられず、みいちゃんは「ただ生きているだけで否定される」存在として育って来たのです。
・教育の機会も奪われた子ども時代
小学生の頃から、みいちゃんには学習障害(識字・書字困難)があり、特別支援学級を勧められていたにも関わらず、母や祖母は見栄の為にそれを拒否。
「普通の子」として育てようとした結果、みいちゃんは授業についていけず、勉強が出来ないまま中学校に進学、中卒で社会に出る事になります。
高校受験も出来ず、名前の漢字すら読めない彼女に待っていたのは、『理解されないまま放置される人生』の始まりでした。
・性に依存せざるを得なかった承認欲求
中学時代、みいちゃんは同級生とのいざこざの中で、「好きな人に好かれたければ体を使え」と誤った性知識を植え付けられます。
その結果、避妊具を万引きし、不良達に体を奪われ、なぜかその時「褒められた」事が、彼女の認知を歪ませていきました。
「性行為をすれば、誰かに認めてもらえる」
という幻想が、やがて彼女の心の「逃げ場所」になっていったのです。
その後も、キャバクラの客、スタッフ、店の人間。
関係性を問わず、「少しでも優しくされた人」に自分から体を差し出してしまう様になります。
これは愛されたくて仕方がなかったみいちゃんの、極端で歪んだ自己表現だったとも言えるでしょう。
・DV彼氏「マオ」との破滅的な共依存
物語の中でみいちゃんは「マオ」という男と同棲を始めます。
彼は暴力的で嫉妬深く、明らかに彼女を支配しコントロールする存在です。
しかし、みいちゃんは彼から離れる事が出来ません。
それは「叱られたくない」・「見捨てられたくない」・「誰かに必要とされたい」と言う強烈な依存心と自己肯定感の低さが原因でした。
マオの様な男ですら、彼女にとっては『誰かに認められている証』であり、彼のもとを離れると言う選択肢は、彼女には存在しなかったのです。
この関係性は、家庭や学校で愛されなかった過去が作り出した『共依存の地獄』であり、彼女の心を更にすり減らして行く事になります。



