2025/11/24 18:18 up
本作に収録されているのは先にあらすじ紹介した『塵埃の魔王』。
幼少の頃に遠くの親族に引き取られた大学生が友人を連れて故郷を再訪するのだが、人気のない村は永久機関によって支配されていた『エーテルの村』。
27年振りの続編のホラーギャグ短編『引きずり兄弟』。
亀と鴉の奇妙な生態が人間に災いとして降りかかる『万寿沼の甲羅』の4話。
話数自体は少ないが、『塵埃の魔王』・『エーテルの村』は共に60ページ超えの中編となっている。
この2つのお話はスケール、超常度合いが素晴らしく、中でも個人的に『塵埃の魔王』はコマの中で描かれる世界が埃に埋め尽くされており、埃っぽさがガンガンに伝わって来るのが凄いと思いました。
伊藤先生の作風は奇天烈なアイデアもさる事ながら、それに説得力を持たせる恐怖空間の画作りが抜群に巧い。
巻末の後書きでは毎回、
「年のせいかネタが出てこない」
と吐露されているが、昔のネタ帳から引っ張り出して来たと言うこのお話も、「ホコリホラー」と言うたった6文字の殴り書きからここまで話と情景を膨らませたと言うのだから恐れ入る。
サブタイトルにもなっている『エーテルの村』は、ご本人曰く「過去に例がないほど作画に苦労した」と言う大作。
画面の中心から細部に至るまで、もう一生分描いたのではないかと思われる位に様々な永久機関が登場する。
お話としてはあまりにも荒唐無稽で発想がぶっ飛んでいるが、それを画にしてしまうのも充分にやばい。
しかもパッと見て手を抜いている感じがせず、必要な分をきっちりと描き、ページを埋め尽くしている。
そこにある種の執拗さすら感じ、それが又怖さ不気味さに繋がっている。
『怪奇ひきずり兄弟』は、伊藤作品の持ち味である『薄幸の美女』と『ギャグホラー』の合せ技。
常に得体の知れない重圧を抱える美少女の穂垂が、性悪揃いの引摺(ひきずり)家に何かを感じ取って近づいて行く。
こちらは「空間の恐怖」と言うよりキャラクターものの側面が強く、しかもコミカルなのである意味安心して(?)読める(笑)。
『万寿沼の甲羅』は本作の中では非常にストレートな話運びで、本作に収録された作品の中では一番昔の作品っぽさを感じた。
キレのある短編を短いスパンで発表していた初期に比べると、近年の作品は全体的に映像作品が流れる様なコマ運びでじっくり描く様になっている印象があります。
その反面、登場人物の動きがホラーなのになぜかコミカル(褒めてます)なのも個人的には魅力で、本作でも遺憾なく発揮されています。
③まとめ
相変わらず奇想天外で読み応えあるホラー作品。
アイデアだけでなく画面の端にまで埋め尽くされた恐怖はファンからすると「これこれ!」という感じで、ますます円熟していると思いました。
この伊藤潤二先生の新名作品、興味を持って頂けたら是非ご覧下さい😇



