2025/11/23 19:13 up
頭だけでなく、体も大事な事を忘れてしまった、可哀相な男の話。
13.『猫婆さん』(おススメ⑥)
ぞぞっとしました。
とても恐怖な話。
オバケよりもよく分からない人間の方が恐いです。
猫に餌をあげる奇妙なおばあさん。
しかし、そのおばあさんが急にいなくなった後、おばあさんがいつも猫に餌をあげていた小屋には、12~3匹の猫が死んでいた。
そんな猫婆さんを13年ぶりに新宿で見かける。
かつての事情を知らない人がこう言う。
「あのお婆さんは感心で、弁当を作ってホームレスに配っている」と。
14.『うわさ話』
猫婆さんの反動か、全然ピンと来ませんでした(個人的な意見です)。
短編集って、配列も大事なんですね、と勝手に思う。
とはいえ、別にこれがどの配列に来てもってな感じで(個人的見解)。
15.『鴨狩り』
若い頃、頭のいい鴨を捕らえて上手い具合に調教し、その鴨を毎年やってくる鴨の集団を誘き寄せる為に使った、と言うお婆さんの話。
しかし、お婆さんは老人施設で、鴨にした自分の行いを罪深く感じる様になったらしく、
「私は悪い鳥です」
と呟くようになったと言う。
しかし、最後の7行で急展開。
お婆さんはかつて特高のスパイであり、素知らぬ顔でオルグに侵入し、仲間を売っていたと言う…
正にお婆さんがあの当時、鴨の役をしていたのですと言うお話。
16.『蛇供養』
こちらも『うわさ話』同様、なんとなくしか伝わってこず、ピンと来ませんでした。
17.『遠い記憶』
思わず笑ってしまったけれど、でも実生活においてもそう言う事って多分にあるかも知れません。
自分の前世がイタリア人で、闘技場でライオンに噛まれた、と言う恐ろしい記憶が鮮明に残っていると啓一は親戚の町子に話します。
すると、奥の部屋で寝ていたお祖母ちゃん、その話を聞いていたらしく、啓一が赤ちゃんの頃に、ライオンの様な大きな野良猫に噛まれた事があったと言うお話。
18.『街のどこかで』
入院している時に見舞いの友人からもらった望遠鏡。
それを眺めると、妙な色の部屋を見付ける。
気になった主人公は退院後、その部屋を訪れると…
なんだかこの短編集ではあまりなかった不思議で恐怖な終わり方。
・怪談? 皮肉? それとも人生の寓話?
この作品が面白いのは、この語りの構造が単なる形式的ギミックにとどまらない点です。
『昔話』が時に現在の話に反転されたり、伏線となったり、あるいはブラックユーモアの引き金となったりする。
例えば『骨細工』は、美術趣味に見せかけてだんだんと悪趣味に変貌して行く。
途中までは微笑ましい日常話なのに、ラストで一気に冷気が流れ込んでくる様な感覚。
こう言うゆっくり効いてくる恐怖の描き方は、まさに『アトーダ・マジック』の真骨頂です。
又、「伝聞形式」で始まるからこそ、作品全体にどこか怪談めいた雰囲気が漂っている。
話者が特定されない事で、物語は時代や場所の枠を超え、「どこかの誰かが体験したかも知れない話」になる。
つまり、これは語りそのものへの信頼をゆさぶる装置でもある。
しかし、本書の魅力はそれだけにとどまらない。
特筆すべきは、そのトーンの幅広さです。
『夢ひとつ』や『フランス窓』の様に、どこか温かく、心に余韻を残す作品もあれば、『靴が鳴る』の様に読後に冷たい疑念が残る話もある。
この緩急と温度差が心地良い。
いわゆる「奇妙な味」を期待して読み始めたつもりが、意表を突かれてほろりとさせられる事もあります。
「こんな話を聞いた」と言う、たった一文から始まる物語が、読者の想像を超えて展開して行く。
この一冊は、まるで文学仕掛けのからくり箱のような存在である。
開ける度に違う顔を見せ、語りと構造、過去と現在、事実と幻想の境界を絶妙に行き来する。
語りの魔術に魅了されたい人、あるいは物語をどう語るかに興味がある人には、たまらない作品です。
阿刀田高と言う至高の語り手の、底知れぬ懐の深さに触れるなら、ぜひこの一冊から始めてみてほしいと思います😇



