2025/11/22 19:17 up
さて、ファウンドフッテージとしての構成は結構直線的ですが、外側にはまず1970年代のアメリカ、そして主人公であるジャックの背景が示されます。
とにかくアメリカが現実逃避したくて、どんどんと退廃的な事、下らない事をテレビに求めて行く事。
そして、そこでは苛烈な視聴率争いが巻き起こっています。
ジャックは確かに売れっ子のパーソナリティーですが、しかしNo.1には晴れずにいる。
一番をどうやっても獲得しなければいけないと言うのが、この作品の根底に置かれているのです。
だから、悪魔を降臨させると言う胡散臭いけど危険なにおいのする題材を選んで番組で取り上げていくのです。
何度も踏みとどまれるチャンスはあったのにも関わらず、ここまでの犠牲、そして、視聴率への執着がジャックを追い込み、正常な判断から遠ざけます。
この視聴率主義による常軌を逸した テレビの在り方は、何度も引用され褪せる事のないシドニー・ルメット監督による傑作『ネットワーク』に通じます。
そこから影響を受けた『ナイトクローラー』とかも好きな人なら、マスメディアの制御不能な暴走映画として絶対に楽しめると思います。
・レトロなテレビ映像を再現した画づくり
悪魔に魂を売ってでも視聴率を獲得し、トップを獲ろうとするジャック。
作品のテイストは見事で、本当に実際の当時のテレビ映像を見ているようです。
アス比が正方形に近い、昔のブラウン管テレビ用の構成になっていて、レトロなザラつきやカラーの感触を再現した画面。
途中のコマーシャル休憩中の映像というのも挟まれていますが(これは誰が撮ったのかというのは曖昧ですが、ノイズにはならない)、そこでの映像テイストが変わっていたり。
又、終盤にジャックが完全に悪魔の幻惑に取り込まれ、自らのテレビ番組の反芻に取り込まれて行く。
その際にはアス比が変わってかなりワイドスクリーンになりますね。
つくり込みも良いですし、おかげで没入感は強まっています。
この映像の中で、悪魔に憑りつかれているリリーがずっとカメラガン見してるのがいい意味で気色悪いです。
あれはつまり、観客を見ているんですね。
普通映画ではカメラ目線というのはほとんど使われない演出ですから、恣意的に感じます。
テレビを見る視聴者を見ていると同時に、この映画を見ている人にも、その悪魔的な呪いと力を及ぼそうという効果が出ています。
・70年代悪魔物の小ネタや意地悪なセリフ回し
悪魔的なカルト映画の側面では、時代設定が70年代というのも、まだまだ宇宙の怪物も超生命体もゾンビも少なく、恐怖の対象が悪魔や悪霊だった頃として効果的に思います。
説得力があるというか。
作品の中でも、終盤にガスがリリーにあの有名な『エクソシスト』のセリフを言ったり、オマージュ要素も沢山あります。
「He’s all wax, no wick(彼は蝋だけで芯がない)」と言うジャックのセリフが、終盤のカーマイケルの死にざまに対する伏線になっていたり、同じくガスが「I wanna keep my head on my shoulder(私の頭を肩に乗せたままにしていたい)」と言うのに対して、カーマイケルは「I promise I make your head spin(きっと頭がクラクラするよ)」と言って、実際にガスは首が180度回転して死んでしまったり。
ホラーにおける死の宣告もあって味わいがあります。
・史上もっとも有名なTVパーソナリティーに
さて、この作品での悪魔と夜ふかしの『悪魔』とは誰なのか。
勿論、リリーには悪魔がついています。
それは間違いない。
しかし、夜ふかしはこの番組のメインパーソナリティーであるジャックです。
視聴者はジャックと夜ふかしする。
そしてこのジャックこそが悪魔なのだと思いました。
彼は視聴率に憑りつかれ、自らが所属している男性のみの謎の団体の力を、そして何よりザンダー・ディアボの力を借りた。
序盤にTV局とサインしている様な場面は、実はサタンを崇拝する団体との契約だったのでしょう。
彼は最愛の妻のミニーを犠牲にする事で史上最大に有名なTVパーソナリティーになろうとした。
リリーは確かに言います。
「あなたを史上もっとも有名なTVのパーソナリティーにしてあげる」
それはどういう形でなのかは明言されていません。
ただ間違いなく、収録現場で大惨事を引き起こした挙句、少女を刺殺したジャック・デルロイは、間違いなく史上もっとも有名なTVパーソナリティーになりました。
こう言う最悪の形で願いを叶えて来る辺りも、悪魔の所業っぽくて最高に良いです。
主演のダストマルチャンは勿論ですが、個人的にはリリーを演じた映画初出演のイングリッド・トレリが素晴らしい存在感だったと思います。
中々の見ごたえのある作品でした。
いかがでしょうか、興味を持って頂けたら是非ご覧下さい😇



