2025/11/14 17:03 up
佐藤二朗氏の圧倒的怪演と、137分ノンストップの心理戦が描く現代の闇。
2025年10月31日に公開された『爆弾』は、呉勝浩先生原作のミステリー2冠小説を永井聡監督が映像化した異色のサイコスリラーです。
『 セブン』や『ダークナイト』を彷彿とさせる緊迫感の中で、「お前らは俺と同じだよ」と言う悪魔の囁きにどう向き合うか。
この作品が突きつけるのは、観る者すべての心に仕掛けられた『見えない爆弾』です。
2025年邦画ナンバーワンとの呼び声も高い本作を、原作との違い、タゴサクの真理、他作品との比較、そしてネット上の考察まで徹底的に掘り下げたいと思います😊
※重大なネタバレあります
原作との決定的な違い。
映画化で失われたものと加わったもの。
本作は『 このミステリーがすごい!2023』『ミステリが読みたい!2023』の両ランキング1位に輝いた、講談社文庫の作品。
映画版(監督:永井聡、脚本:八津弘幸・山浦雅大)は137分と言う尺 の中で、 原作の複雑な人間関係と心理描写をどう料理したのか。
・削ぎ落とされたキャラクターの深度
伊勢(寛一郎)は原作では「引きこもりの弟」と言う背景を持ち、タゴサクの卑下する姿が弟と重なる事で術中にハマる展開が詳細に描かれる。
だが映画では、「文系ですか?」と確認される程度のサブキャラクターに縮小された。
同様に、長谷部有孔(自殺した刑事)の不祥事も、原作では「被害者を悼む心と自慰行為が一人の人間の中に『同居』していた」と言うテーマの核心として描かれるが、映画では駆け足で処理される。
最も「掴みづらい」と評されたのが石川明日香(夏川結衣)だ。
原作では、息子・辰馬を殺した理由が「娘の美海を『不祥事で自殺した父、テロ犯の兄、子殺しの母』と言う重荷から解放する為」と明確に示される。
映画ではこの動機が曖昧で、「なぜ息子を殺したのか腑に落ちない」と言う不満が多数あります。
・映像ならではの演出が光る変更点
一方、映画だからこそ輝いた改変もある。
ラストシーンで類家(山田裕貴)の背中を映す事で、『最後の爆弾』が類家の心の中に植え付けられた事を視覚的に表現。
原作では「最後の爆弾は見つかっていない」と言うセリフで終わるが、映像表現によって余韻がより強烈になった。
又、タゴサクが動画で名指しする標的リストから「冷笑主義者」が削除されている。
これは重要な改変だ。
某映画評論家の指摘では、
「冷笑主義までタゴサクに相対化させてしまうと何が何だか分からなくなる。改変によって踏みとどまった」
つまり、タゴサクと類家自身が持つ冷笑的側面をより際立たせる為の戦略的削除だったと言う事です。



