2025/10/18 19:09 up
(M男な店員さん✖️妖艶なお客様)
昼下がりの光が、店内のレンズを透かして揺れていた。
鏡の前に座る彼女の姿は、
まるで静かな映画のワンシーンのようで、その輪郭だけで世界が少し色を変えた。
「右が少しきついかもしれません」
そう言いながら手を伸ばす。
髪をよけた指先がかすかに触れた瞬間、香りと体温が、思考より先に胸を揺らした。
「優しいんですね」
鏡越しに微笑むその唇が、言葉よりも深く心に触れてくる。
ネジを回す小さな音だけが、沈黙を割った。
視線を合わせまいとするほど、彼女はゆっくりとこちらを見た。
「これで、どうですか」
自分でもわかるほど声が震えていた。
彼女は微かに笑って、
「ええ、ぴったり。…あなたの手が覚えてくれたのかもね」
そう言って立ち上がり、ガラス越しの光を背に、ゆるく髪を直した。
残されたのは、ほのかな香りと、胸の奥でまだ形にならない余韻だけだった。



