2025/12/29 15:01 up
12月29日、雲ひとつない澄んだ青空。
この日、僕は〆詣に行きました。
年始に行くのが初詣、年末に行くのが〆詣。
僕の作った造語。
今年の感謝は今年のうちに伝えて、
静かな年始を迎えたい。
ふと思いついたのがきっかけです。
僕の家の周りには、徒歩で行くことができる神社が4つある。
どこに行こうかと悩んだ結果、
4つ全部行くことにした。
いかにも、僕らしい結論。
最初の神社。
駅から近く、街中にあるにも関わらず境内の中は静か。
大きな木があって、僕は幹に手をそえる。
手のひらから樹液の流れを感じ取れるように、
耳を澄ませた。
賽銭を入れて手を合わせる。
「今年の〆にやってきました」と心の中で唱える。
「今年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします」
冬の冷たい風が耳元を吹き抜けた。
2つ目の神社の手前には公園があって、
その公園を抜けて境内に向かう。
また同じように手を合わせた。
じんわりと温もりが伝わる。
さっきより、心が澄んでいるのがわかる。
3つ目の神社も公園の近くにある。
手を合わせ手目を閉じる。
冬休みに入った子供たちの、
遊具ではしゃいでいる声が聞こえて心地良い。
手を合わせる時間が伸びている。
お日様は温かく、僕の背中を照らした。
4つ目の神社に向かう途中にコンビニに寄った。
お弁当を買って、お参りの後に食べることにする。
4つ目の神社は、子供の頃からよく行った神社だ。
夏の縁日、冬の初詣、思い出はいくつもある。
手を合わせて僕は
「ごめんなさい」と心の中で言った。
祈る時間は、今までで一番長い時間となった。
祈り終えて僕は隣の公園でベンチに座り、お弁当を広げた。
すぐさま、隣のマンションの屋根から大量の鳩が飛んできて、
僕の周りを取り囲んだ。
ここで普段、君らに餌を与えてくれる人がいるんだろうな。
僕は腰の曲がった老人男性をイメージした。
赤ちゃんを抱いたお母さんが日向ぼっこしている。
ベビーカーにはスーパーの袋が乗せられている。
僕は赤ちゃんと目が合った。
変な生き物を見たという感じで、
赤ちゃんは目を見開いた。
空は相変わらず雲ひとつなく、
青い色がどこまでも広がっている。
「ご馳走様」
僕は食事を終える。
僕が餌を与えてくれない人間だと悟った鳩たちは、
またマンションの屋根に戻って行った。



