2025/12/30 18:38 up
静かな部屋で耳を澄ませる。
言葉より先に伝わるものがあると知った。
触れずとも、近づきすぎずとも、心はふとほどける。
長く背負ってきた役割や期待を、ここでは一度降ろしていい。
瞳に宿る湿り気は弱さじゃない。溜めてきた時間が、ようやく光を通す瞬間だ。
セラピストとして求められるのは、技術よりも在り方だと思う。急がせない、評価しない、正解を置かない。
ただ、呼吸を合わせ、体温の距離を守り、安心が広がるのを待つ。澄んだ瞳は、何かを取り戻した証のようで、こちらまで背筋が伸びる。
年齢を重ねるほど、癒しは贅沢ではなく必需品になる。強くあろうとした日々の奥で、静かに求めていたものに、今日も手を差し出す。
帰り際の表情が少し軽くなるなら、それでいい。
濡れていても澄んでいる、そのまなざしを胸に、明日もまた扉を開けていきたい。



