2025/12/27 02:23 up
掴みかけた物語
蜘蛛の巣の間を通り抜け
絹で型取った雫が
葉の上に落ち
はじけて霧になる
扉の入り口で
思考が道を示し
レールの熱が
伝導して
汽車を走らせる
時計塔の影は
重さを帯び
トンネルの先の輝く景色が
雨の静かな街のように
遠くで音を流す
触れそうな指の先
かすむ光のガーデン
目の前で揺れ
距離だけが
縮まらない
キャンバスの願いを置き
前を向く後ろ姿
いつもの道を外れ
歩く道の端で
笑顔の綿が舞う
虹のかかる曇り空
確かにある七色
風が触れる頬
ポケットの中で
静かに灯る
積み上げたレンガ
壁の中にいる自分
息を吸い込んだ時間は
レンズの向こうの
ステージを覗いていた
ただ音を聴く足跡
波に連れ去られ
溶けて元に戻る砂
深海に沈み
軌跡が刻まれる
見上げる異世界の空
並ぶタロットカード
水面に影を映し
照らし続ける瞳が
忘却の城を写す
自分の姿を映す
雨上がりの水溜まり
宇宙の記憶が
引き出しのノートに
書かれていく
繰り返すゼロ
数センチでも掴みにいく
祈りは結んだ靴紐の数
スローな距離でも
きっと遠くない


