2025/12/17 19:18 up
反抗期。
それは、親の言葉がすべて雑音に変わる時期。
何を言っても響かず、視線は冷たく、返事は最小限。
——ふふふ、よかろう。上等だ。
母は考えた。
正面からぶつかるのは得策ではない。
叱っても、諭しても、暖簾に腕押しだ。
ならば、別ルートから攻めよう。
数年前、密かに話題になった「嫌がらせ弁当」の本。
直接的な暴力も、説教もない。
あるのは、 状況をそのまま可視化したデザイン弁当 だけ。
言葉にしない分、逃げ場がない。
ご飯の上に並ぶメッセージ、
無言で主張する具材たち。
蓋を開けた瞬間、すべてを悟らされるあの感じ。
母はその本を、静かに購入した。
計画はすでに始まっている。
まずは不定期に投入。
感情的にならず、淡々と。
「今日はどんな弁当だろう」と、
少しだけ心をざわつかせながら学校へ向かわせる。
これは復讐ではない。
教育でもない。
ましてや愛情の押し売りでもない。
ただひとつ、
親は、何も言わずとも、震えている
——それを伝えるための、静かな作戦だ。
果たしてこの計画は、
子どもの心に届くのか。
それとも、母の自己満足で終わるのか。
答えは、弁当箱の中にある。



